かつ丼。

「熟成肉」というのをご存じだろうか。肉の塊をしばらく適温で保存して、外側の腐った部分を取り除いて中の熟成させた肉を食べる、というものだ。贅沢この上ない食べ方だが、非常にもったいなく感じてしまう。

「俺は外の肉も余さず食べたい」

そう思われる同志がどのくらいいるのか気になるところだが、とりあえず私は「熟成肉」が嫌いだ。


同じ贅沢でも私が大変気に入っている贅沢がある。それが「かつ丼」だ。

美味しい「とんかつ」を説明しろ、と言われたら皆さんは何と答えるだろうか。多くの方は、「カラっと揚がった衣がサクサク、中がジューシーで・・・」といった風に答えるのではなかろうか。

しかしそんな「とんかつ」をあろうことか煮汁に浸し卵でとじてご飯の上に乗せてしまい、衣を湿らせてしまうのが「かつ丼」だ。何とも贅沢ではないか。


ところが、かつ丼は庶民的な料理として世間に広く知れ渡っている。それはなぜか。私は、かつ丼は「とんかつ」の良さを消すのではなく、「かつ丼」としての素晴らしさを昇華させているからだと思うのだ。

そんな「かつ丼」が私は好きだ。「熟成肉」は引き算、「かつ丼」は足し算なのだ。


話が長くなってしまいそうだ。ここは四の五の言わずにうまいかつ丼とは何か説明しよう。

かつ丼のポイントは4つある。

1.衣と卵とじのバランス

2.つゆの量

3.味の濃さ

4.カツ以外の具


1は最も重要で、かつ丼の印象を大きく左右する。衣が緩くなりすぎていないのが重要だ。スッと箸で持ったらその瞬間衣がはげるようではダメだ。しかしあまりにサクサク感が残っていてもいけない。つゆが染みることで六割ほどサクサク感を奪われていながらも、つかず離れず肉に衣が寄り添っている、その衣に卵がふわりと毛布をかけてあげれば、これ以上ないかつ丼の完成といっても良いだろう。


2はどんぶりの底につゆが残りすぎないのが大切。ちょっとご飯を混ぜればすぐにつゆが無くなる程度がベスト。

3は好みがあるだろうが、私は上品か下品かで言えば下品なかつ丼が好きだ。あまりに薄味のかつ丼はかつ丼を食っている気がしない。

4も好みの問題だが、私は玉ねぎと三つ葉またはあさつきを少々がお勧め。グリーンピースは敵だ。グリーンピース生産者の方には大変失礼だが、そこは一市民の戯言、どうか寛容に願いたい。


なかなかこれを満たすかつ丼には出会えない。今のところ東京のかつ丼第一位は無骨なおやじ夫婦と娘さんが三人で切り盛りする家の近所のとんかつ屋のものである。2、3は完璧。1も及第点であり、あとはあさつきを足してくれれば・・・

なんだかあの店のかつ丼を食べたくなってしまった。また肉をバンバン叩いて柔らかくするあの光景が浮かぶ。

もっともGW中はお休みとか張り紙があっても不思議じゃない雰囲気の店。出向くのはまだ早いと私のレーダーが言っている。890円の贅沢はもう少し先になりそうだ。

将棋じゃないほう。~吉森弘太郎の新宿囲碁教室~

2018年7月からスタートする囲碁教室の紹介や連絡をするページです。 後は好きなことを思いつくままに書いていければと思います。

0コメント

  • 1000 / 1000