AI考察~最終回~

早いもので、もう年末。それに合わせてAIの話も最終回です。

最後のテーマは、「小目のシマリにペッタンペッタンくっつけ」です。

こんな感じ。他にも色々ありますが、これを代表例として取り上げます。


囲碁には「序盤は石を少し離して進めていきましょう」というセオリーがあります。

が、AIさんはそんな格言的なことにはとらわれない。序盤からペッタンペッタンくっつけていくのです。

しかし、逆に言えばAIはまだ格言を使いこなせない。ここが人間のまさっている部分です。そんなわけで今回は格言を使ってこのペッタンペッタンをぶった切っていきましょう。


このペッタンペッタン。良い点と悪い点が一つずつあります。

まず良い点から。「弱い石にはツケるな」という格言があります。これは逆説的には「強い石にはツケると良い」という格言でもあります。

小目のシマリはその部分に二手かけているので、単純に「強い石」と考えるのがAI流だと私は解釈しています。なぜ強い石にはツケると良いのかというと・・

細かい説明は省きますが、例の序盤からペッタンを使うと、一例としてこのような進行になります。

ざっくり感じてほしいのは、お互い石がたくさんになって、黒も白もなんか強そうになった。ということです。

この「お互い強くなる」というのがペッタンした時の特徴です。

この時、黒は二手かけた強い石からのスタート、白はゼロからのスタートなのがポイントです。黒は強い→強い、白は弱い→強いの状態になっているので強い石にはツケて良い、という理屈になっています。

以上の点がペッタンペッタンの良い点です。ここはAIに首肯できる部分と言えます。


しかし、このAI流には悪い点があります。

それは、「相手の石数が多い場所で戦わない」というセオリーに反している、ということです。

火事と喧嘩は江戸の華、なんて昔は言ったものですが、喧嘩はやはり数が多い方が有利。すでに二人で構えているところに一人で飛び込むなんて、基本的には不利なのです。

例えば本図のように、白が強くなったと思って白20などよそへ打つと、黒21、23など襲い掛かってきます。すると序盤から左上の白がまだまだ弱く、お荷物を抱えて不利になります。

なので白20など左辺にもう一手かけて守ることになります。とりあえずこれでいいように思えますが・・・

これでも黒21など喧嘩しにくるかもしれない。戦いになったら元々黒が多いところなので黒が有利です。

白20をもっと白石に近いところに打てば安全ですが、さんざんペッタンして壁を増やして、狭く地を作るのでは効率が悪いかもしれない。そういう悩みが生まれます。


ということで、このペッタンペッタンはですね・・・

「良い点も悪い点もあって、うまくいくかもしれないし、いかないかもしれない」

というのが私の持論です。なんて玉虫色な結論!申し訳ありません。

でもね、本来どっちかが急に良くなるものなんてそうそうありません。どっちに転ぶか分からない、これこそ囲碁の醍醐味ですよ!と言ってごまかすことにします(-_-;)

黒がいい感じに戦いに持ち込めば黒が有利、白がうまく戦いを避けられれば白が有利かなー。というのが私の評価です。

実際自分でペッタンペッタンを使ってみてもうまく行くかどうかは半々。相手に使われてもうまく行くかは半々。


そんなわけで皆様、来年ペッタンペッタンを使う時はどうぞ、新年の運試しと思って使ってみてはいかがでしょうか?

今年も一年お世話になりました。良いお年をお迎えください。

将棋じゃないほう。~吉森弘太郎の新宿囲碁教室~

2018年7月からスタートする囲碁教室の紹介や連絡をするページです。 後は好きなことを思いつくままに書いていければと思います。

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