3位 坂田栄男
古今東西最強の棋士は誰か?という話題になったなら、この人の名前を挙げる人は必ずいると言っていいでしょう。
昭和の最強棋士、坂田栄男先生の紹介です。本因坊栄寿と名乗ったので坂田栄寿と覚えている方も多いかもしれません。
私が子どもの頃、もう坂田先生は高齢でしたが、NHK杯に出ているのをたまたま見る機会がありました。おお、爺さんが碁を打ってる!しかも名前が強そう!(二十三世本因坊栄寿か坂田栄男名誉NHK杯のどっちかだったと思う)
という第一印象で何となく覚えています。
碁の勉強をちゃんとやり出すとその爺さんは全盛期の成績がすさまじかったことを知りました。
シーズン30勝2敗という驚異的な勝率を出したり。
あの藤井聡太君と同じ29連勝の記録を持っていたり。
羽生さんの七冠に近い七タイトル制覇(NHK杯が入ってるので七冠と言うには微妙なのでこの表記)したり。
圧倒的な成績で間違いなく当時の最強棋士と言えます。
そして坂田先生が私の好きな棋士の3位に入ったのは、勉強する中で坂田先生の驚異的な妙手を見たからです。色々な妙手の中で最も私が感動したのが坂田先生の妙手です。解説するのは大変なのですが、頑張ってご紹介します。
黒1と打たれた場面。坂田先生の白番です。ちなみに黒は藤沢秀行先生です。かなり白が厳しく攻められています。私が白なら、恐らくここで・・・
白2と打ってしまうでしょう。これが一番安全なんです。なんとか左下の白につながれます。ただ白がぺしゃんこになってしまい、黒の注文通りです。
それなら、と白2の方にノビてしまうと、黒3から7の攻撃を食らい、白二子が取られます。そこで、妙手の出番です。
白2が妙手。令和の今ならクリックミスかな?とか思ってしまいますね(笑)
この手、まさに絶妙。控室で検討していた棋士たちがこの手を見て水を打ったように静かになった、という逸話があります。どういう意味かというと・・
黒3と受けるなら、白4を打つ必要がありますが、白6とこっちにノビて打てます。ちょうど白10がカケツギの形に。
黒3には白4と切り、黒5には白6と押さえてOK。黒7には白8が手筋で黒二子が取れます。
黒3が最強の反発ですが、これには白4、6の切りが好手。この白を捨て石に先手で白を固め、白14のハネにまわれます。
実戦は黒5とさらに反発したものの、最終的には黒9までのようなフリカワリ(実戦はちょっと手順が違いますが、簡略化しています)になりました。隅の黒四子を取って白成功です。
複雑だったと思いますが、ざっくり言うと、
「全部がパズルのようにうまくいく奇跡の一手」
です。打たれてみると筋と形の急所なのですが、まず思いつかない場所です。
皆さんと指導碁をしている時も、私が思いもつかないところに打たれることが結構あります。大抵は残念ながらあまり良い手ではありませんが、よーく考えてみると時折すごい可能性を秘めた妙手を打たれることがあります。
最後までそれが続くことはないですが(笑)
ですがそれは皆さんが未知の可能性に溢れているということ。私では発見できない手を見つけられるということです。先生の言うことも大事ですが、自分の発想で打ちたいところに打つことはそれ以上に大切なこと。
その手を本当の妙手に仕上げるまでは勉強が必要ですが、その発想は大切にしてほしいと思っています。
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